北欧の幸福を日本へ KIELO COFFEEが目指すコーヒーの価値革命

北欧の幸福を日本へ KIELO COFFEEが目指すコーヒーの価値革命

2025.7.30配信

幸福度が高いと名高い国、フィンランド。北欧の寒い地域に位置するこの国では、一日に平均4~5杯以上コーヒーを飲む習慣がある。

職場や家庭でのコーヒーブレイクが人々の交流やリラックスの場として重要視されており、これが幸福度の高さに寄与しているとも言われている。

株式会社After THREE代表取締役の吉池弘樹さん(30歳)は、学生時代にフィンランドを訪れた。

建築デザインのレベルの高さや人々の温かいつながりなど、感銘を受けるものは多々あったが、特に印象に残ったのが“コーヒーブレイクの文化”だった。

「日本ではあまり知られていないコーヒー文化が、彼らの幸せの根底にあるのではないかと思いました。そうした文化を提供することで、日本でのコーヒーの価値をもっと底上げできるんじゃないかという想いがあり、『KIELO COFFEE』(キエロコーヒー)を開業しました」

24歳で『KIELO COFFEE』を立ち上げ

2019年5月、吉池さんが24歳のときに『KIELO COFFEE』をオープン。

KIELOとはフィンランド語で「すずらん」のこと。“再び幸せが訪れる”との花言葉を持つフィンランドの国花を店名にした。

学生時代に御徒町のスターバックスコーヒーでアルバイトをしていた吉池さんは、当時からこの土地に深い思い入れがあり、御徒町からもほど近い秋葉原での出店にこだわった。

「最初はビジネスマンに僕たちのコーヒーを届けたいという思いがあったので、この地を選びました。初めて金融機関から借入するときは、怖い気持ちもありました。この事業をしっかりやり切らねば、と腰をすえた感覚はありましたね」

そんな吉池さんがこだわっているのが、仕入れるコーヒー豆と店舗運営のスタイルだ。

世界中から常時20種類近くの豆を取り寄せ。

一般的に流通しているものではなく、コンペティションやオークションなどでしか仕入れることができない『スペシャルティコーヒー』の豆を選んでいる。

仕入れ先は、日頃からやりとりのある農園主たち。どの農園で、誰が、どのような環境と方法で育てた豆なのかを追跡できる、トレーサビリティが確保された豆のみを仕入れている。

豆は店舗で販売のほか、オンラインショップでも購入が可能。

社員複数人でクオリティーをしっかりチェックした豆は、店舗にて焙煎・抽出される。

たくさんコーヒーを飲むフィンランドでは、飲み疲れない浅煎りのコーヒーが主流だ。

「フィンランドのコーヒーブレイク文化を日本に根付かせたいという想いがあります。なので、店舗ではフルーティーで軽やかな浅煎りのコーヒーをメインに提供しているんです」

焙煎の仕方だけでも、深煎りと浅煎りで赤ワインと白ワインくらい味が変わるんです、と吉池さんは言う。

提供するカップにもこだわりが。すずらんを連想させる形状をした白色のカップにコーヒーを注ぐことで、フレーバーをより捉えやすく、コーヒーのアロマを最大限感じられる。

「スペシャルティーコーヒー税込800円~」。今回注文したAgrividは、みかんやビワのような果実感と、爽やかな酸味、余韻が長く続く甘味が特徴の一杯。

焙煎機はオランダ産の『Giesen』を使用。

いくつものコーヒーショップから焙煎機を借りて試す中で、自分たちのめざす味を実現できるものを購入した。

「豆一粒焼くのにも、一万通り以上のプロファイルがあるんです。そういう“アートとサイエンスの融合”みたいなものにこだわっています」

コロナ禍でも行動し続け、新店舗を続々オープン

2019年のオープンからすぐにコロナ禍という逆境に直面したものの、SNS運用やUber Eatsへの加盟、オンラインショップの開設など、実店舗以外の収益源やお客さまとのタッチポイントをいち早く取り入れることで、苦境を乗り越えた。

2021年には“All for green すべては自然のために”をコンセプトに『Be green by KIELO COFFEE』(ビーグリーンバイキエロコーヒー)を文京区本郷に開店。

店内で作る焼き菓子はすべてヴィーガンかつグルテンフリーで、環境にも身体にも配慮したコーヒータイムをお客さまに届けている。

「コロナ禍に、ビジネスって会社とお客さまだけじゃなくて、環境とか地球みたいな大きなステークホルダーがあってこそ成り立つんだなと感じたんです。だから、地球にも優しいビジネスをやりたいと思って、サステナブルなコンセプトのカフェを作ろうと考えました」

「バナナブレッド税込550円」。米粉を使用しており、もちもちとした食感が癖になる。

2024年には『X coffee』(エックスコーヒー)を銀座にオープン。

Extraordinary(規格外)なコーヒーブランドとして、最上級のコーヒーを提供。

「X coffeeでは一杯2,000円のコーヒーも提供しています。パナマ産のゲイシャという、この業界の人が聞いたら飛びつくようないい豆を使っているのですが、『高くてもいいものだから』と海外の方を中心に注文してくださる方がたくさんいらっしゃるんです」

こうした日常を通じて、飲食業やコーヒーの価値を高め、コーヒー産業の未来を明るくしていきたい、と吉池さんは話す。

2025年8月にはKIELO COFFEEの浅草店もオープン予定。

北欧のシンプルで温かみのあるデザインと雰囲気を取り入れつつ、浅草の伝統的な和の要素を融合させた内装が特徴。吉池さんはこの空間を通じて、国内にいながら海外にいるような心躍る気分を味わえる場所を作りたいと考えている。

コーヒーのデフレをなくしていきたい

吉池さんには、上場企業になるという大きな目標がある。

「事業を続けていく中で、低賃金や重労働を理由に辞めていく仲間たちと出会いました。彼らにはコーヒーを淹れる技術があり、知識も豊富で、そのうえ英語まで話せるのに賃金が少ない。そんな現状を変えるためにも、僕は”コーヒーのデフレ”をなくしていきたいんです」

『KIELO COFFEE』はアットホームでローカルに愛されるブランドに、『X coffee』はアジアを中心にグローバルに展開していけるようなブランドとして、今後も店舗を増やしていきたいと吉池さんは語る。

「海外に行った先々に自分たちのブランドがある、そんな未来を想像するとわくわくします。たくさん店舗を作り、会社が大きくなっていけば、スタッフに様々な働き方を提案できる。そうすれば、悲しい別れもなくなると思います」

会社やお客さまはもちろん、地域や社会など、関わるすべての人々を幸せにしたいという想いを胸に、吉池さんは今も経営に取り組んでいる。

「10年後に仲間たちに『この会社に入ってよかった』と言ってもらえるような会社にしたいです。長く働き続けるのが難しい業界だと思われていますが、彼らが結婚式を挙げたり、マイホームを購入できたりするようになったら、この業界が一歩前に進めた証になると信じています」

この想いは吉池さんだけでなく、業界で働く別企業の仲間たちも同じだ。

彼らと共にチャレンジしていくことで、コーヒー業界の未来は、より明るく輝くものへと歩みを進める。

吉池さんの挑戦は、コーヒーを通じて人々の暮らしや業界の未来を変える大きな一歩となるだろう。その先に広がる新しいコーヒー文化の可能性に、これからも目が離せない。

株式会社After THREE
https://afterthree.jp/

KIELO COFFEE
東京都台東区台東1-29-4第一共和ビル1F map
8:00~18:00
定休日:なし

Be green by KIELO COFFEE
東京都文京区本郷4丁目37−6 メゾンドゥ本郷 1F map
臨時休業中(2025年7月時点)

X coffee
東京都中央区銀座2-11-1 銀座ランドビル1F map
8:00~18:00
定休日:なし