2025.06.30配信
JR日暮里駅から徒歩10分ほど。谷中霊園を過ぎたところに、古民家3棟をリノベーションした施設「上野桜木あたり」がある。
その一角にあるのが、塩とオリーブオイルの専門店『おしおりーぶ』だ。国内外から取り寄せたこだわりの塩やオリーブオイルは、すべてテイスティングが可能。実際に味わいながら商品を選べる空間で、健康的でおいしい食生活をサポートする。
前オーナー引退で「大好きな場所がなくなるのは困る」
店舗をかまえる「上野桜木あたり」は、台東区上野桜木にある複合施設だ。『おしおりーぶ』のほかに、ビアホール、パティスリー、手づくり雑貨店などが軒を連ねる。
施設の歴史を語ってくれたのは、オーナーの畑野和夫さん。
「3棟とも昭和13年に建てられた民家で、いずれも実際に人が住んでいました。現在の施設となったのは、2015年3月です。この10年でお店が入れ代わりながら、今に至っています」
10年前、その一角で『おしおりーぶ』は開店した。現在店舗マネージャーを務める石塚恵美子さんは当時、スタッフの1人だった。
「私は生まれも育ちも谷中なんです。前オーナーから『手伝ってほしい』と声をかけられたのがきっかけでした。昨年、前オーナーが引退を決めて、閉店の選択肢もあったんですが『大好きな場所がなくなるのは困る』と思い、お店を引き継ぐことにしました」
テイスティングでは「日常」のイメージを重視
店舗名は、メイン商品である「お塩」と「オリーブオイル」を組みわせたのが由来だ。近年、好きなものを「推し」という文化も定着し、「オリーブオイルを推す仲間」とも捉えられるようになってきたと2人は喜ぶ。
「塩と油は生きるために必要なもの、それらを楽しみながら食生活に取り入れる」という店舗のコンセプトは10年前からずっと変わらない。
「お店で働く前は、塩とオリーブオイルはなんとなく体にいいものという印象でした。でも実際に働きはじめると、オリーブオイルには品種や製法、産地によって大きく違いがあることを知り、奥深さに驚きました。調べれば調べるほど『体にいいもの』だと、より理解できたんです」と話す石塚さん。
店内では全ての商品をテイスティングできる。空間の中央には、試食用の塩やオリーブオイルがズラリ。
商品の背景やストーリーを伝え、日常で使っている場面を想像できる接客を心がけていると畑野さんは話す。
「おいしさの感覚は人それぞれなので、お客様の反応を見るのは楽しいです。例えば、オリーブオイルはそのままはもちろん、醤油などの家庭に常備されている調味料とも合わせて試食していただきます。料理が想像できるからか、帰りぎわに『ごちそうさまでした』とおっしゃるお客様もいらっしゃいます」
共感する石塚さんは、オリーブオイルへのこだわりを語る。
「オリーブオイルといえば『洋食』のイメージですが、和食との相性も抜群なんです。私は、お刺身やお寿司を食べるときに、オリーブオイルに醤油を1滴垂らして食べるのが大好きですね。スキンケアにも使うなど、オリーブオイルが生活の一部として当たり前になっています」
店舗運営を担うため、さらにオリーブオイルを探求
息の合った石塚さんと畑野さんだが、なぜ、2人で店舗運営をすることになったのか。石塚さんは、店舗を引き継いだ当時を振り返る。
「昨年前オーナーからお店を引き継ぐ際、私は音楽家としての活動もあって1人ですべてを担うのは難しいと思ったんです。そのとき、救世主となってくれたのが畑野さんでした」
当時、畑野さんは何を思っていたのか。
「私も前オーナーとは元々の知り合いで、石塚が店舗マネージャーになるタイミングで『やってみる?』と声をかけてもらったんです。石塚の人柄のよさは知っていたので、迷わず承諾しました。店舗で初めて、バルサミコ酢と合わせて食べたオリーブオイルのおいしさは、今でも鮮明に覚えていますね。お店へ立ってからまだ1年ほどの新米で、本や現場で日々商品の知識を学んでいます」
店舗マネージャーとなって以降、石塚さんは気持ちを新たにした。
「店舗運営を任される立場になってから、さらに勉強しました。好きなことはとことん追求したい性格なので、本場イタリアのオリーブオイル鑑定士(オリーブオイル主要産出国で定められた政府公認の有資格者)の講座を受講しました。理解とともに世界も広がり、接客もより楽しくなりました」
外国人観光客に人気の「WASABI」オリーブオイル
仕入先は国内外にあり、イタリアに住む日本人オリーブオイル鑑定士が現地で探し当てた商品なども並ぶ。
専門店として認知されはじめ、こだわりある個人の輸入販売者から「商品を置いてくれませんか?」と提案される機会も多い。
お店を訪れるのは日本人が55%、外国人観光客が45%で、通販でのリピーターも多いと畑野さん。
「香川県産のわさびを混ぜたオリーブオイルが、外国人観光客の方々に特に人気です。テイスティングで感動される方も多いです。当初のパッケージにはローマ字表記が無かったため、海外事業も視野に入れたOEM商品として『WASABI』と表記したデザインに変更して展開しました。現地のレストランや海外での販売にも繋げられたらいいなと思っています。」
輸入販売への挑戦でブランドとしての広がりも新たに
さらに、新たな展開も。ポルトガル産のオリーブオイルで輸入販売に挑戦する。きっかけは、石塚さんの家族がポルトガルに住んでいること、そして音楽活動だった。
「家族で音楽活動をしていて、ポルトガルでは何度もコンサートツアーをしています。ポルトガルのファティマは、聖母マリアが出現したカトリックの聖地。そこで作られたオリーブオイルが好きで、日本でも紹介したいと思いました」
新たな展開に、意欲をみせるのは畑野さん。
「ポルトガルにある現地の農場と契約して、工場から輸入します。小売店としての役割だけではなく、他店舗にも卸す予定ですので、お店にとっては大きな変化です。『おしおりーぶ』ブランドとして、輸入販売にも力を入れていければと思います」
畑野さんの言葉に、石塚さんも共感する。
「1人でも多くの方に、オリーブオイルは体にいい、おいしい、使いやすいということを広めていきたいです。これからもこのお店を拠点に、オリーブオイルや塩を通じて、食の楽しさを伝えていきたいと思います」
日本や海外の食卓で「おしおりーぶ」の名前が広く浸透する日を、2人は笑顔で夢見ている。
株式会社おしおりーぶ
東京都台東区上野桜木2-15-6 上野桜木あたり内 3号棟1F map
03-5834-2711
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