Tシャツボディで世界に挑む 「JM1」のジャパンクオリティ

Tシャツボディで世界に挑む 「JM1」のジャパンクオリティ

最強の日常着にして世界共通のファッションアイテムであるTシャツ。

デザイン違いで何枚でも欲しくなるアイテムだが、着心地や丈夫さなどTシャツそのものに注目することはあるだろうか。日本のブランドのものであってもプリント加工や染色を施す前の“ボディ”と呼ばれる無地Tシャツは、海外製であることが多い。

そんな中、2018年に誕生したのが「JM1(ジェイエムワン)」。“JAPAN MADEでNo.1”を掲げ、日本製Tシャツボディを展開する業界注目のブランドだ。株式会社丸一の代表取締役・一ノ瀬広行さん(38歳)は、ブランドを立ち上げた理由について次のように語る。

「インバウンド効果で訪日外国人が増えています。彼らはハイクオリティの日本製T シャツを買いたい。それなのに売っているのは海外製。おかしくないですか。誰もやっていないのなら自分が作ろうと思ったんです」

海外ボディメーカーを圧倒する風合い

東京都北区のニット衣料メーカーである同社は、さまざまなアパレルブランドの衣料製造を手がけてきた。 一ノ瀬さんはこれまでに培ってきたノウハウをJM1に投入し、自ら試編みを繰り返して、世界と勝負できる生地を開発。綿糸のなかでも上質で丈夫な光沢コーマ糸を採用し、綿100パーセントのTシャツボディを完成させた。

「生地って表を触っちゃうじゃないですか。でも本当に大事なのは肌が触れる裏側なんです。それから手の平よりも手の甲で触った方が分かりやすい」

たしかに、ある海外製品とJM1を触ってみると品質の差は明らか。前者は硬くてガサガサしており、編み目の粗さは素人でも分かるほど。それに対して、後者は編み目が細かく、絹のようなやわらかさを感じる。

こだわり尽くした上質な一枚

JM1はアパレル向けのスリムなシルエットが特長で 、半袖TシャツならXSから3XLまでの7サイズをそろえている。Mサイズのホワイトが3950円(5枚入り・税込)、ブラックが4700円(5枚入り・税込)。海外製のものと比べると高めの価格設定だが、日本製としては破格だ。

「安さよりも品質をちゃんと考えて作らせてもらっていて。最近は日本製しか扱わないブランドも多いですし、他社と差別化できているかなと思います」

たとえば仕上がりの良し悪しを左右する縫製は、今なお手作業に依存していて、職人の腕が問われる。とくにTシャツは伸縮性があるため、ひっぱりながら縫うと糸がつれて、生地が波打ってしまうのだ。

「シンプルだからこそ、ごまかしが効かない。Tシャツほど難しいものはないですよ」

また、縫製した製品を一度水洗いするワンウォッシュ加工は、形状を安定させるための一手間だ。綿は洗濯すると縮みやすく、ある他社製品は初めの洗濯で10センチ以上サイズダウンしてしまうという。その点JM1は縮むことがないので、安心してジャストサイズが選べる。

オンリーワンのものづくり

JM1のカラーはホワイトとブラックの2色のみ。他社のように何十色ものバリエーションを持たないのには理由があるという。

「ホワイトは何色にでも染められるので、オンリーワンのカラーリングが可能になりますよね。そうするとみんな別注で染めたくなる。それが狙いです。在庫を抱えるリスクもありませんし、2色で十分なんです」

Tシャツボディの売り上げを伸ばしながら、JM1ではオリジナルデザインのTシャツを自社ECサイトで販売している。芸能人やキャラクター、企業とのコラボレーションTシャツも次々とリリースし、デザインのバラエティはさまざまだ。ブランドのコンセプトを尋ねると、一ノ瀬さんからは意外な答えが返ってきた。

「うちはあくまでボディ。『白いTシャツに絵を描いて』みたいな感覚なんです。JM1としてのコンセプトがないので、どんな相手とでもコラボできる強みがあります」

Made in Japanを再び世界へ

コストの安い海外製造が主流となっている現在、国内アパレル産業は衰退し、廃業へと追い込まれている。経済産業省の調べによると、2017年時点での衣料品の国内生産比率はわずか2.4%で、最も国内市場が盛んだった1991年に比べて4分の1まで大きく縮小している。

特に国内にある縫製工場はコスト重視で地方に置かれることが多く、働き手が集まらないことや利益が出にくいことから事業規模が縮小しており、悪循環が続く。

そうした現状に対し、同社ではあえて東京・錦糸町に自社工場を構え、若者を積極的に登用している。暗くて閉鎖的な工場勤めのイメージを打破し、いずれはそこで働く彼らが独立できるようなシステムを作りたいと考えている。

「JM1が普及していけば、今以上に国内工場にどんどん仕事が入れられるんですよ。そうするといい循環になるので。日本製っていうのをしっかりプライドを持ってやっていきたい」

一ノ瀬さんによると、日本製Tシャツの市場を開拓しようとしたものの、コストの問題をクリアできずに撤退していった会社も少なくないそう。だからこそJM1はアパレル業界で瞬く間に話題となり、スタートから約半年で1万枚以上を売り上げた。

その評判は国内に留まらず、アメリカやカナダ、マレーシア、香港、台湾など世界から問い合わせが相次ぐ。JM1がどんな躍進を遂げるのか、期待せずにはいられない。

JM1 (ジェイエムワン)
http://jm1.jp/

株式会社丸一(渋谷営業所)
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http://maruichi-knit.co.jp/