“見える”お店で新しい客層を 駒込に佇む海鮮居酒屋

“見える”お店で新しい客層を 駒込に佇む海鮮居酒屋

下町ながらの風情と学生街の活気が混ざり合う文京区本駒込。

白山駅から大通りを進み白山上交差点近くの路地を入ると、グレーを基調にしたシックな建物が見えてくる。重厚感ある一枚板の看板が目を引く『こもり亭』だ。

確かな目利きで選ばれる海鮮と銘酒たち

二代目店主の小森亮治さん(47歳)は、カウンター越しに手際よく調理しながらも笑顔で迎えてくれた。

厳選した魚を使った料理と希少な地酒が頂けると地域でも評判の同店。

会話に織り交ぜながら、旬のお刺身盛り合わせと地酒の組み合わせを勧めてくれた。

「見える」をコンセプトに店舗をリニューアル

初代店主の父・英治さんの後を継ぎ、15年前からお店を切り盛りする亮治さん。2021年12月、地域の若い層やファミリー層など新たなお客さまも取り込むべく、1年間の改装期間を経てオープンした。

コンセプトは『見える』だ。和テイストはそのままに、入口にガラス扉を採用したりテーブル席横に窓を設けたことで店内の様子が外からも覗ける作りにした。結果、客足が格段に増え、売り上げも倍増した。

「以前の外観だと中の様子が見えなくて、少し入りづらい雰囲気だったんです。お座敷も新たに作り直し、2歳未満のお子さまも歓迎しています。」

職人技を気軽な雰囲気で

昨年まで、昼は都内にあるカリフォルニアレストランでシェフとして働き、夜は同店の店主として切り盛りしていた亮治さん。その経歴は少しユニークだ。

サーフィンでプロを目指し、23歳でオーストラリアに単身留学。その時、偶然入った日本食レストランの味に感動し、料理の門を叩いたという。

「1年間サーフィンと和食について学んだあと、ビザの関係で日本に帰国したんですが、その頃に父が体調を崩してしまって。そこから父と一緒に店をやることになりました。その頃から、料理人としての幅を広げるために洋食を学ぼうと『ウルフギャング・パック』でランチタイムの料理長をし、夕方から『こもり亭』で働く日々でしたね」

亮治さんが創り出す和食には、随所にカリフォルニアのエッセンスが織り込まれている。

「『ぶり炙りのみぞれ合え(税込850円)』は和食っぽいネーミングですが、ぶりに大根おろしが和えてあるだけではなく、そこにカリフォルニア料理のソースを一口乗せています。あっと驚く美味しさと発見はチェーン店にはない楽しみがあると思います」

日本酒との相性も抜群の『まぐろ皮ポン酢(税込440円)』は、希少な鮪の皮部分を使用している。日本食の食材が入手しづらかったオーストラリア時代に学んだこのメニュー。珍しい味を求め、遠方から足を運ぶ方がいるほど人気の一品だ。

創業時から変わらない逸品と希少な銘酒たち

カウンター前には、日替わりのおすすめメニューが書かれた短冊が並ぶ。

「昔からある短冊は母が書いたものです。変な話、やってる料理はほとんど変わらないんですよ。出来るだけ値上げをせずに母の字を残していきたいと思っているのは、家族で美味しいものを食べに行きたいと思った時に気軽に来てほしいから。寿司屋さんだとハードルが上がってしまうし、割烹屋さんだともっと上がってしまいますが、うちが扱ってる魚はそういったお店とほぼ一緒なんです。」

魚は毎朝豊洲へ出向き、自ら仕入れを行う。魚の目利きは英治さんに教わったと話す亮治さんだが、仕入れ方は親子で異なり市場での買い付けは手探りだったという。店を継いだ当初、市場に通い詰め、卸の方との関係構築に始まり質の良い食材を手に入れる知識やツテを身につけた。

1980年の創業当時から味も値段も変わらない『ニラ玉子焼き(税込450円)』は、常連客のリピート率100%のメニューだという。ファミリー層からの注文も多い『じゃこチャーハン(税込650円)』はボリュームも美味しさも大満足。

地酒の提供を始めたのは、亮治さんの取り組みだ。
入手困難な『十四代(税込1980円)』や『九平次(税込1000円)』といった希少な銘酒を安定して頂けるのは大きな魅力。ズラリと並んだレア物に、酒好きの心が躍る。

「日本酒が美味しく飲めるつまみのある店、美味しいつまみで日本酒が飲める店、とどちらも欠けないようにしたいと思っています。これを軸としているからこそお酒選びにも力を入れ、和食に合う地酒は常時8種類ほど用意しています。」

日常に溶け込む、身近な存在

亮治さんの温かな人柄と確かな味にリピーターは増える一方だ。手間を惜しまず丁寧に作られた料理はもちろん、接客も行う亮治さんとの会話を楽しみにくるお客さんも少なくない。

日々の疲れを労う場として、家族揃って外食を楽しむ日の選択肢として、希少な酒を堪能する場として、さまざまなシーンに溶け込む同店には、笑顔と活気が溢れている。

父からの教えやメニューを踏襲しながら、新しいチャレンジを試み進化し続ける新生・こもり亭の今後に期待だ。

こもり亭
東京都文京区本駒込1-3-18 map
03-3813-8625
17:00〜21:00(L.O.20:30)日曜営業
定休日:月曜日・第一第三日曜日
URL
https://instagram.com/komori_tei?igshid=YmMyMTA2M2Y=