カード加工の達人プレゼンツ!思い出で遊ぶ「オリジナルトランプ」

カード加工の達人プレゼンツ!思い出で遊ぶ「オリジナルトランプ」

結婚式、子供の卒園、ペットの誕生日――人生に訪れる大切な瞬間。
スマホやフォトブックに収めておくだけではなく、何かもっと特別なモノに残すというのはどうだろう。

株式会社田中紙工では、思い出を家族や友人と共有しながら楽しめる「オリジナルトランプ」を制作している。

撮影した写真をカードの両面に印刷すれば、記念品や贈り物として喜ばれるのはもちろん、プレー中のテーブルトークにも花が咲く。

エンドユーザーの声で需要に気づく

カード類の抜き加工技術で日本一のシェアを誇る同社だが、製本業界の課題として、発注元である印刷会社や出版社に大きく依存する。

そこで拡大するカードゲーム市場に直接アクセスできるルートを開拓しようと、老舗印刷会社の昇文堂とカードゲームファクトリーという共通ブランドを立ち上げ、イベントや展示会への出展を試みた。

すると来場者から“小ロットなら作りたい”という声がいくつも寄せられる。

「そんなところに需要があるのかと驚きました。それらを取りこぼすことなく受注できれば、息の長い商品になるんじゃないかと思ったんです」

代表取締役社長の田中真文さん(59歳)は、消費者のニーズを見逃していたと当時を振り返る。

それまで社内に印刷部門はなかったが、受注から納品まで自社で完結するシステムを構築。コストの大幅削減に成功した。

カードの断裁は0.01ミリ単位

発注はWebサイト『オンデマンドトランプ.com』から。

その際に気になるのは単価と最小ロット数。トランプは通常、大量印刷に向くオフセット印刷で制作するため単価が高くなりがちだ。最低発注個数は3桁だったりする。

しかし同社では10年前に少数印刷が可能なオンデマンド印刷機を導入し、1セットから作ることができるサービスを提供している。料金は1組4,950円(税込)から。

真文さんの長女で担当者の田中千晶さん(28歳)によると、トランプは54枚1セットだが、一枚一枚異なる画像を入れることもできれば、全て同じデザインで統一することもできるという。

「お客さまの半数以上が友達や恋人、家族へのプレゼントとして利用されています」

スマホまたはPCから画像やイラストをアップロードし、ユーザー自らレイアウト編集を簡単に行える。

標準パッケージはソフトタイプの簡易的なPETケースだが、ハードタイプのプラスチックケースに紙製の白スリーブを被せたギフト用や、スリーブにオリジナル印刷を施した特別仕様も対応可能だ。

カードをめくると、インデックスの文字やマークが寸分違わず同じ位置にある。

「人間の目はシビアで、ずれているとすぐに分かっちゃう。普通の製本屋だとコンマ5ミリって全然気にしないんですが、カードの世界では不良品になっちゃうんですよ」

これは同社が印刷物の断裁加工と型抜き加工を行う専業者、いわゆる“裁ち屋”として創業したからできること。どんな仕事もこなせる断裁士になるには10年かかるという。

設備と人材には投資を惜しまない

同社が板橋区で創業したのは高度成長期の1962年。

デジタル化によって出版・商業印刷の市場はピーク時から4割縮小する中、同社は学校関係の印刷物とトレーディングカードを手掛けることで躍進を果たした。

インターネットが登場したとき、真文さんは“情報を伝達する手段は紙からインターネットに置き換わる”と直感したという。

「生き残るためには紙媒体そのものに価値があるものに注力すべきで、カードは差別化できる一番の商材だと思ったんです」

需要拡大に合わせて積極的な設備投資を継続してきた。例えば、カード抜きの加工に欠かせないブッシュ抜き機を11台所有。

型抜き加工の多くはプラモデルにあるようなつなぎがあり、抜いた紙の縁に小さな突起が残る。一方ブッシュ抜きはクッキー型のような刃で数百枚の紙を一気に抜くので、つなぎは必要なく仕上がりも滑らかだ。

若い人材も成長の原動力。工業高校に求人票を出すなどして30年以上前から毎年新卒採用を続けており、社員の定着率も高い。

「うちは社員の幸せが第一。社員を大事にすれば、彼らがお客さまを大切にしてくれるようになるんです」

製本業界のトップとして再・創業に励む

2018年から全日本製本工業組合連合会の会長を務める真文さんは、製本業界の現状に危機感を募らせる。

「印刷会社は新しい仕事を取ってきたり製本の内製化を進めているのに、製本会社は得意先から仕事を請け負うだけで、基本受け身なんですよね」

特殊な加工は製本のプロでないとできない。ビジネスモデルを変えて生き残りを図らないと、世の中にはありふれた紙物しかなくなってしまうと警鐘を鳴らす。

提案するのは、印刷市場、出版市場に続く第3の市場の創生だ。

従来持っている技術やサービスを、新しい顧客に売ってみる。市場が変われば需要も異なるのではないかと期待を込める。

「B to Cをやっていると、お客さまから、いいものを作ってくれてありがとうというお礼を直接いただけるんです。それが一番嬉しいことで、毎回朝礼で共有しています」

一流のマジシャンみたいな、すご腕の職人集団が手掛けるオリジナルトランプ。晴れやかな一年の始まり、家族団らんのサプライズアイテムにいかが。

株式会社田中紙工
東京都板橋区坂下2-11-4 map
03-3966-4892
https://www.tanakashikou.co.jp/