2026.8.10配信
2025年12月、三河島にオープンしたクレープ専門店『Crepe mille(クレープミル)』。
ファミリー層やママ世代を中心に、地域の人びとが足繁く通う人気店だ。

「本当に想像以上に多くのお客さまに来ていただいています。オープン前に思い描いていたより、3倍くらいですね」
そう語るのは、Crepe mille店主の相沢美優さん(26歳)。
多くのお客さまに支持されるその裏には、80回もの試作を重ねた生地づくりと、相沢さんの飽くなき探究心があった。

25歳で決意した「お店を持つ」という夢
「いつか自分のお店を持ちたい」
そう思うようになったのは、中学生の頃だった。
父が個人で居酒屋を営んでいたこともあり、相沢さんにとって飲食店は幼い頃から身近な存在だったという。高校卒業後はホテルの専門学校へ進み、日本を代表する一流ホテルで接客やサービスの経験を積んだ。

転機となったのは社会人5年目。
同期たちが転職や新しい挑戦を始める姿を見て、自分はどうしたいかを真剣に考えるようになったという。
「転職するか、このまま会社に残るか悩んだんです。でも、私はどっちでもなく、お店をやりたいと思いました」

ホテルで働くなかで、「大きな組織では自分の考えをすぐに形にできないもどかしさを感じていた」と話す相沢さん。
「旬の素材を使ったメニューを提案しても、形になるまでに時間がかかる。自分で考えたことを、自分のスピードで実現できる場所で働きたかったんです」
そう心を決め、上司へ「1年後にお店を開くので辞めさせてください」と伝えた。
開業までの日々の中で、複数のクレープ専門店の現場にも立ち、実践的な技術を身につけていった。
特に力を入れたのが、他店の研究だった。東京から大阪までさまざまなクレープ店に足を運び、40~50店舗を食べ歩いた。

研究したのは味だけではない。接客、提供までの時間、クレープスタンドの有無、包み紙の巻き方まで細かくメモし、「自分の店ではこうしよう」と考え続けた。

クレープとドリンクを一緒に注文した方には、クレープスタンドにて提供。包み紙を破いて食べやすいようにという相沢さんの気配りだ。
出店エリアは、土地勘のある荒川区と足立区で検討した。
北千住を中心にクレープ専門店が多かった足立区に対し、荒川区は当時1店舗のみだったため、競合の少ない荒川区に絞り込んだ。
当初は日暮里や町屋を希望するも条件に合う物件が見つからず、そんな中で出会ったのが三河島の物件だった。

「西日暮里も近いし、再開発も進んでいる。明治通り沿いで、区役所も小学校も保育園もある。ここなら長くやっていけると思いました」
こうして三河島の物件に決め、2025年12月、Crepe milleをオープンした。
一つの生地に込めた、二つの食感
国産米粉と小麦粉を使った生地は、約80回に及ぶ試作の末に生まれたもの。一つの生地で「もちもち」と「サクサク」の二つの食感を表現できるのが特徴だ。
「クリーム系はもちもち、生地を楽しむバターシュガーはサクサクがおいしいと発見しました。でも、生地を2種類作るわけにはいかないので、焼き時間で変えられる配合にしています」
北海道産バターやフランス産の塩など、素材にもこだわる。卵は秋田県産、乳製品は北海道産のものを使う。クリームやソースもすべて自家製だ。

「クリームやカスタード、キャラメルソースに至るまで、既製品に頼らず手作りしているお店は少ないと思います。原価率は高くなりますが、いいものをお手頃な価格で届けたいんです」
生地本来のおいしさを味わえる定番の『バターシュガー』は、草加市から通う常連客も「一番好きなメニュー」と話す。
また、『キャラメルバナナ生クリーム』は、手作りのキャラメルソースがバナナと生クリームをつなぎ、濃厚ながら最後まで食べ飽きない一品だ。
なかでも個性的な一品が『ピンクグレープフルーツはちみつ生クリーム』。さっぱりとした柑橘の酸味が生クリームの甘さを引き立て、暑い季節にも食べやすいと評判だ。

生クリームは、その日の分だけを毎朝仕込む一日限りのもの。夏場は1日におよそ10回、少しずつ泡立てながら提供しているという。甘すぎるものが苦手だという相沢さん自身の好みもあり、砂糖の量はかなり少なめ。具材とのバランスを考え抜いた、甘さ控えめのクリームだ。
「最後の一口まで美味しく食べてもらいたいんです。上だけではなく、食べ進めても満足してもらえるクレープを目指しています」

思い立ったら、すぐ形にする
店づくりにも、相沢さんのこだわりが散りばめられている。
ドリンクカップに貼るシールから、店頭やカウンター周りに貼ったタイルまで、装飾はすべて自らデザイン。さらにオリジナルグッズまで幅広く展開している。

毎月替わる期間限定メニューも一人で考えている。コーヒーは荒川区内の焙煎所『カメヤマコーヒー』に足を運び、クレープに合う豆を自分で選んだ。
ベビーカーや自転車のままでも注文できる窓口を設けたのも、「なるべく多くの人に気軽に来てほしい」という思いからだ。

「思いついたらすぐ試したくなるんです。個人店だからこそ、自分が『これだ』と思ったことをすぐ形にできる。それが個人でやっている醍醐味だなと思いました」
小さな工夫を積み重ねながら、お客さまが何度でも足を運びたくなる店づくりを続けている。
お客さまと友人に支えられて
オープンから半年。順調に見える相沢さんだが、自信を失うときもあるという。

「自分が作っているクレープが世界一美味しいと思う時期もあれば、本当にこれでいいのかなと落ち込む時期もあります」
そんなとき、心の支えになってくれるのはスタッフとして手伝ってくれる友人たちだ。
「今自信なくて、ってそのまま全部話したら、みんなが励ましてくれて。本当にありがたいです」

応援してくださるお客さまの存在も大きな力になるという。
「『人生で一番美味しかったです』と言ってくださる方もいて。そういうお客さんがいてくれるから、また頑張ろうって思えるんです」
「町のクレープ屋さん」であり続けたい
実際に三河島で営業してみて、相沢さんが感じることがある。
「本当に町の人が温かいんです。スタッフも『働きやすい』と話してくれています」
午後3時ごろになると、学校帰りの子どもたちが店を訪れる。
「『美優ー!』って下の名前で呼んでくれるんです。学校であったことを話してくれたりして、その時間がすごく楽しいですね」
地域の人との何気ない会話が、相沢さんにとって大切な時間になっている。

「2号店やフランチャイズは、今のところ全く考えていません。町のクレープ屋さんとして、ちょっと疲れたから行こうかな、と思える場所になれたらうれしいです」
納得のいく一枚を追い続ける探究心と、お客さま一人ひとりに寄り添う温かな接客。
その一つひとつの積み重ねが、地域に愛される『Crepe mille』をつくり上げている。

Crepe mille(クレープミル)
東京都荒川区荒川3-51-1map
最新の営業日時はInstagramをご確認ください。
Instagram :https://www.instagram.com/crepemille_mikawashima/
Threads :https://www.threads.com/@crepemille_mikawashima?xmt=AQG0mwlluLyvJkYXgfGBWFyI97cB-Ynzpy0KKehPUwawy-M


