もっと会社が好きになる社内報改革のススメ

もっと会社が好きになる社内報改革のススメ

働き方が大きく変わりつつある日本企業。テレワークの推進などでリアルなコミュニケーションの機会が減る中、社員一人ひとりに自律的な行動を促し、組織の求心力を高めるにはどうすればいいのか。

そこで注目されているのが“社内報”だ。

いま1番読まれる社内報とは

特に最近、急速に導入が増えているのが低コストで制作できるウェブやスマートフォン向けアプリの社内報。フォーマットに沿って入力すれば記事が簡単に作成でき、すぐに掲載できるので伝えたい情報をリアルタイムに伝達できる。記事ごとに効果測定がはかれて、読者である社員の反応が見れるのも強みだ。

加えてウェブ社内報は、閲覧を社内のプライベートネットワークに限定すれば、営業資料や慶弔情報などの機密性の高い情報も発信できる。スマホアプリはプッシュ通知で記事への誘導がしやすい。

こうした冊子以外の新たな社内報を自分たちの会社は取り入れていくべきなのか。1997年の創業以来、420社以上の社内報企画制作・コンサルティングを手がけてきたウィズワークス株式会社代表取締役CEOの浪木克文さん(54歳)は次のように話す。

「ウェブやアプリに完全シフトする企業もありますが、一つのメディアですべてを網羅するのはまだ難しい。冊子はベテラン向きでOBやOGにも配布できるし、じっくり読んでもらいやすい。一方で、若手には読まれにくくなる傾向があります。より多くの人に読んでもらうには、冊子とアプリの組み合わせが良いと思いますね」

社員と会社の絆を深める

浪木さんは社内報を「人と組織のエンゲージメント(会社への愛着)を高めて持続的に企業価値を向上させる、インターナルコミュニケーションツール」と定義する。

社内報を通して経営層や同僚の考えを知り、組織を理解することは仕事へのモチベーションアップにつながってくる。特に若手社員においては、帰属意識が高まることで人材の流出の歯止めとなる。

例えば、ある大手バイクメーカーでは、生産現場の若手にスポットを当て、「なぜこの仕事をしているのか、何が楽しいのか」を社員自身の言葉で伝える特集を組んだ。その後「自社ブランドを意識して日常業務に取り組めているか」という調査を行ったところ、20代生産職だけが会社全体の平均値を上回る結果となった。

また、ある不動産販売会社では、営業の成績優秀者を社内報の表紙に起用する企画で、業績アップに成功したという。

このような魅力的な社内報を作る企業の担当者を、同社では『インターナルコミュニケーション・プロデューサー』と呼ぶ。

「組織内の意識改革を起こすことで課題を解決し、結果的に企業価値が上がる。これを実現することが、彼らが持つ本来の役割なのです」

社員の関心を探る

社内報の企画・制作をスムーズに進める第一歩は、発行目的をしっかり決めること。ところが、目先の記事作りにとらわれるあまり、そこをおろそかにしてしまう人が実に多い。

インターナルコミュニケーションの研究開発や社内報に関する市場調査等を行う社内報総合研究所を有する同社では、クライアントから「どんな特集を組めばいいのかわからない」という相談を受けた場合、次の4つの切り口からヒアリングを行う。

1つ目は、周年行事や新規事業のローンチなど、企業のライフイベントの整理。2つ目は、会社が現状で抱える課題は何か。3つ目が企業を取り巻く社会トレンドで、最近だとSDGsや働き方改革、感染症対策といったテーマが挙げられる。そして4つ目は経営者メッセージだ。

自社の実態と社会情勢を正確につかむことができれば、発行目的が明確になり、「ネタ切れどころかページ数が足りなくなるくらいです」と浪木さんは話す。

発行目的を編集方針に落とし込むときのコツは、経営者視点だけでなく、読者である社員の視点で情報のバランスをとること。『社内報のコンテンツABCD』はそれが何かを考える手がかりとなる。

Aは「An IDEA(理念)」、Bは「BUSINESS(仕事、事業)」、Cは「CULTURE(企業文化、風土)」、Dは「DATA(企業のハード情報)」。

例えば、エンジニアや技術者の関心事はもっぱら「仕事」なのに対し、流通業やサービス業で働く人は「企業文化」に興味を示す傾向にある。社員のモチベーションを上げるポイントを分析することが肝心だ。

制作のヒントが学べる『社内報アワード』

実は社内報制作は、経営に影響を与えるほど重要な仕事である。にもかかわらず1~2人で担当するケースがほとんどで、身近に相談できる人がいなかったりする。

同社では2002年から、社内報担当者のモチベーションアップとクオリティの底上げを目指し、全国の社内報企画の頂点を決める『社内報アワード』を年に一度開催している。今年は236社・515企画の応募があり、『くまもん』のプロデュースや映画『おくりびと』の脚本で知られる小山薫堂氏が特別審査委員を務めるなど、業界内外から注目のイベントへと成長している。

その授賞式の模様は2020年10月6日から4日間、特設サイトとウェブ会議システムを活用して無料配信される(要事前予約)。一般に社内報は社外秘であることが多い中、ゴールド賞を受賞した企業による事例発表が見られるなど、貴重なヒントが得られるチャンスだ。

社内報には広告宣伝のような即効性はないかもしれないが、持続的に企業価値を向上させていくツールとして用途は多岐にわたる。めまぐるしく変化する社会において、社員のエンゲージメントが大きな支えになることは間違いない。

ウィズワークス株式会社
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