洗濯は家事じゃなくなる?WASH&FOLDの一歩先行くランドリービジネス

洗濯は家事じゃなくなる?WASH&FOLDの一歩先行くランドリービジネス

「まず干すのが嫌ですよね。それから取り込んでたたむのも大変(笑)」

洗濯代行のパイオニアである株式会社アピッシュの代表取締役社長・山崎美香さん(50歳)は洗濯が大嫌いだったといいます。

洗濯代行とは、家庭で洗濯するような日常の衣類を洗濯・乾燥し、たたんで返却してくれるサービスのこと。シャツや靴下、布団など水洗いできるものなら何でも引き受けてくれます。

もともと欧米ではWASH&FOLD(WASH=洗う、FOLD=たたむ)の総称で浸透していますが、日本では14年前に山崎さんが開業したのがはじまり。そのままずばり『WASH&FOLD』の屋号で、洗濯代行&コインラインドリーを全国24店舗展開しています。2017年には東京・中目黒駅の高架下商業施設に旗艦店をオープンさせ、話題を呼んだのも記憶に新しいところです。

WASH&FOLDでは、シワが最小限になるように一点ずつ手でたたみ、軽く圧縮した状態でビニール包装しています。他人の洗濯物と一緒にせず個別洗いしているので、柔軟剤やたたみサイズの指定など、自分好みの仕上がりにオーダーすることも可能。現在、年間約3万7000人が利用し、8割以上がリピーターになっています。

アメリカでの出会いから半年で開業

山崎さんがこのビジネスに出会ったのは2004年のアメリカ出張。コインランドリーを利用しに訪れると、洗濯代行が普通に行われていました。当時カフェを経営していた彼女は、朝から晩まで働き通しでなかなか家事の時間をとれずにいました。日本でも利用したいと思って調べたところ、このサービスを提供している事業者は皆無。

「日本にないなら自分がやるしかない」と起業を決意し、ケータリング事業のセントラルキッチンとして借りていた物件を洗濯代行の店に急遽変更して、わずか半年で開業にこぎつけました。

「前例がなかったので、『いくらだったら出す?』と周りに聞いたりして値段をつけました。原価とかから考えていたら、絶対につまらないことになるじゃないですか」

海外では洗濯物の重さで料金を決めるのが一般的なところ、山崎さんは「専用バッグ詰め放題」の定額制を考案しました。Tシャツ約60枚(6~8kg)が入るレギュラーバッグは、集荷・配達込みで1つ3000円(税込)。店頭持込みにすれば800円引きになります。

開業1年目は本当に暇だったそうですが、「知ってもらえれば絶対に使ってもらえる」と山崎さんに焦りはありませんでした。その見込み通り、一度新聞に取り上げられた途端、テレビや雑誌、各種メディアからの取材が殺到。情報感度の高いプチリッチ層から広まり、今では一般家庭にも普及しています。

ここ近年は、「離れて暮らす親の様子を確認してほしい」という高齢者の見守りを兼ねた依頼も増えているそうです。さらに宅配便サービスの開始によって、全国どこからでも利用できるようになりました。

若者が憧れるブランドに

WASH&FOLDはコインランドリーだけで家賃をまかなえるほど繁盛している店舗もあります。

「開業した当時のコインランドリーといえば、暗くて待っているのが怖いものばかり。まずはこのイメージを払拭しなければいけないと思いました」

たしかにどの店舗もスタイリッシュで清潔感のある雰囲気。ずらりと並ぶ大きな洗濯機は扉をステンレスに張り替えたり、焼き付け塗装するなど“かっこよく見せる”工夫がされています。

「男の人も女の人も居心地がいいジェンダーレスなデザインにしています。ピンクの看板とか、洗濯が女性の仕事と刷り込むようなのは好きじゃないんです」

スタッフがたたみ作業を行うスペースを目立つ位置に配置するのは欠かせないこだわりです。男女ともに若いスタッフがハツラツと働いています。

「彼らは洗濯屋というより、流行りの仕事をしていると思っているんです。だからすごく元気ですよね。私は『顔が拓いているか』とよく言うんですが、そういう子たちが洗濯をしているのもブランディングの一つです」

同社ではどんな若手であっても裁量が与えられ、アイディア次第では事業拡大の一役を担うこともあります。たとえば、スニーカーウォッシュは男性店長の提案から始まったサービスで、2019年秋には渋谷にスニーカー専門ランドリーを出店することが決まっています。

「スニーカーが大好きな子が洗うとすごくきれいになるんです。日本はまだまだスニーカーを外で洗ってもらうという文化はないけど、それを変えていこうと。誰もやっていないことっておもしろいと思うんですよ」

地域に開かれた憩いの場所に

「アメリカのコインランドリーにはピンボールがあったりして、待っていて楽しい感じでした」と振り返る山崎さん。

神奈川県にあるWASH&FOLD葉山店では、コールドプレスジュースショップ『Why Juice?』と葉山の有名ベーカリー『Ble Dore(ブレドール)』とコラボし、カフェエリアのある複合店舗に挑戦。地元住人と観光客が店内を行き交います。

また海水浴場に近いことから、屋外シャワーを設置して無料開放したところサーファーが殺到。これに関しては、売り上げにはあまり結びついていないそうですが、山崎さんはおおらかに受け止めています。

「そういうのがいいんです。ランドリーって憩いの場所で、何もしなくても遊びに来てくれれば雰囲気がいいじゃないですか。お金を取るなんてことをしたら、豊かなサービスにはなりません」

他店舗でもドリンクやキャンディ、Wi-Fi環境の無料提供は当たり前。いわゆる“ソーシャルランドリー”と呼ばれるところで、ノートパソコンで仕事をする社会人や、友達との待ち合わせ場所に使う子どもの姿が日常的に見られます。

究極は無料サービスに

地域密着を積み重ね、未開の市場でノウハウを培ってきたWASH&FOLD。とくに共働き世帯からのニーズに応えるべく都心部出店を強化しており、フランチャイズ展開をしながら都内50店舗を目指しています。

日本中に店舗網ができれば、“洗濯ビッグデータ”を活用したビジネスができるのではと山崎さんは密かな野望を抱いています。

「ゆくゆくは洗濯代行を無料にしたいんです。他社商品のサンプルを配布したり、ITみたいに広告を収益源にしておもしろいことができるんじゃないかな」

天候に左右されず、時間を有効に使え、干す場所に困ることもない。洗濯代行の利用価値は人それぞれですが、家事がひとつ減るだけで心に余裕が生まれることは言うまでもありません。まずは家族や自分へのごほうび感覚で洗濯のアウトソーシングをはじめてみませんか。

株式会社アピッシュ
東京都渋谷区代々木3-12-11
03-3320-9510
https://wash-fold.com/

WASH&FOLD中目黒高架下店
東京都目黒区上目黒2-45-14 高架下78 map
03-6303-3811
9:00〜23:00
https://m.facebook.com/washfold.nkm/