暮らしに理化学硝子 ガレージセールでときめきを見つける

暮らしに理化学硝子 ガレージセールでときめきを見つける

東京メトロ日比谷線三ノ輪駅から徒歩5分。ひっそりとした住宅地の一角に、明治45年創業のガラスメーカー・株式会社小泉硝子製作所の本社があります。

同社では倉庫を兼ねるこの場所で、「ガレージセール」を春と秋に年2回開催。アウトレット品を販売するこのイベントに毎回およそ500人が来店するそう。さまざまな形状のガラスが陳列され、多くの女性客らでにぎわっています。

理化学や医療用途が大半を占める同社のガラス製品ですが、この日はインテリア雑貨の顔をしています。

試薬瓶の中に入ったドライフラワー。先のとがったイカ瓶にはコーヒー豆。底面が広く、口がすぼまった三角フラスコやコニカルビーカーは安定感があって、花びんとしても理想的なかたちです。

実験器具が暮らしの道具に

「理化学ガラスって同じ形でずっとあるもの。昔ながらでいいと感じられる人や、一周回って目新しいと感じる人が増えている。そんなイメージを持っています」

同社代表取締役社長の小泉忠信さん(46歳)は、自社の製品が“暮らしの道具”として人気を集めている理由についてこう話します。

売り場を切り盛りしているのは、忠信さんの妻の優子さん(46)。結婚するまでガラスの専門学校に勤めていた彼女。詰めたり、挿したり、飾ったりと、ディスプレイも自らコーディネートしています。

「うちの自宅でも、妻が試薬瓶で梅酒を作ったり、大きめのシャーレでレアチーズケーキを作ったりしていますね」(忠信さん)

使い勝手を考えたアレンジも

小泉硝子製作所で生まれるガラスは、ホウケイ酸ガラスと呼ばれるもので、耐熱衝撃や耐薬品性に優れるのが特徴です。耐熱温度差は120℃ほどで、アツアツに熱した容器に冷水を注いでも割れません。

そのほとんどは専門商社や問屋を通じて、医療機関や学校、製薬会社などに納められます。同社の製品が一堂に揃い、私たちが実物を手に取って買い求められる機会はこのガレージセールだけです。

店頭に並ぶのは、気泡の数や細かな傷などどれも理化学の厳しい規格でNGとされるもの。日用品としての普段使いには全く問題ない品質です。

「そのままだと用途が限られる製品は、加工を施すケースもあります。口部をカットして器にしたり、注ぎ口をつけてサーバーにしてみたり」(優子さん)

気になるお値段は「ほとんど製造原価くらいのイメージ」とのこと。なかには9割引のものもあるそうで、掘り出しものを見つける楽しさがあります。

すべては職人の手仕事で生み出される

同社が現在製造するアイテム数はおよそ100。職人が手吹きで一つずつ製作しています。

24時間365日稼働する溶解炉の内部は約1500℃。猛暑を超える暑さのなかで、吹き職人は黙々と仕事をしています。

炉の中で水あめ状に溶けたガラスを吹きざおで巻き取ったら、正確なリズムでなめらかに回し続け、息を吹き込んで膨らませます。金型などの道具も使いながら、いくつもの形状を作っていく作業にムダは一切ありません。

決められた範囲の肉厚や寸法で精巧に作られている理化学ガラスですが、炉内部の状況は刻々と変化するため、熟練の職人であっても容易ではないそう。どうしても出てしまう規格外品は細かく砕き、炉に入れて再利用します。

「規格通りの製品を作り続けていても、なかなか評価をしてもらえる機会って少ないじゃないですか。それが一般に売れるってことは、ある意味評価してもらえたってことですよね。あまり表には出さないけど、職人も嬉しいみたいですね」(忠信さん)

はじまりは女性社員の「もったいない」の声

ガレージセールは、「使えるものを壊してしまうのはもったいない」という優子さんと女性社員の発案ではじまりました。

「売れたらいいなと思う反面、理化学ガラスが売れるのだろうか、という疑問はありました。でも彼女たちに後押しされたというか、ちょうどスペースもあったのでやってもらったというか」(忠信さん)

普段から製造に携わる女性陣がエプロン姿で店頭に立ちます。

「各製品がどのように作られ、どのように使用されるかを熟知しているので、商品のストーリーをお伝えできます。オリジナル商品の製造のお話をいただくことも多いですね」(優子さん)

一方、忠信さんら男性陣は裏方に徹しているそう。

「初日に私が茨城の工場で作業していると、妻から『もう在庫がないから持ってきて』と電話がかかってくるんですね。当日中に届けに行きます(笑)」(忠信さん)

開催告知はSNSとメールのみにも関わらず、行列ができるほどの盛況ぶり。売り上げも当初から6倍ほどに増えているそうです。

「お客さまが来すぎて整理券を配ったことがあったのですが、そのときは怖くなっちゃいました(笑)」(忠信さん)

暮らしのアイディアがふくらむ2日間

忠信さんと優子さん、そして社員のチームワークで10年以上続くガレージセール。次回の開催は2018年11月2日(金)と3日(土)の10時から16時です。

アウトレット品やオリジナル商品『三ノ輪二丁目ネルドリッパー』に加え、今回は若手吹き職人の作品も販売予定。さらに同社が創業以来付き合いのある志賀昆虫普及社の標本箱も販売するそうです。

「混雑時以外であれば、大きさや形、用途などご要望に応じたご提案もできますよ」(優子さん)

シンプルだからこそアイディア次第でいろいろな使い方ができるのも魅力的。人気の商品は、初日の早い時間に売れ切れてしまう場合もありますが、午後は比較的ゆっくり見られるそうです。いざ、理化学ガラスの世界へ。

理化学硝子アウトレットガレージセール
2018年11月2日(金)・3日(土) 10:00~16:00

株式会社 小泉硝子製作所
東京都台東区三ノ輪2-8-7 map
03-3803-3741
http://koizumiglass.co.jp/
https://www.facebook.com/koizumiglass/
https://www.instagram.com/koizumiglass

<お問い合わせ先>
茨城県猿島郡五霞町元栗橋4906-6
0280-80-1050
9:00~17:00
土曜・日曜・祝日定休