個性を焙煎。住宅街に香る下町のスペシャルティコーヒー豆専門店

個性を焙煎。住宅街に香る下町のスペシャルティコーヒー豆専門店

東京・町屋の住宅街の中に自家焙煎スペシャルティコーヒー豆の専門店、『Blackhole Coffee Roaster(ブラックホールコーヒーロースター)』はあります。豊かな芳香漂うこの専門店は2017年6月にオープン。自家焙煎されたコーヒー豆は、ホームページや工房併設の直売所で販売されており、カフェやレストランにも卸しています。

店名にある“Blackhole”は、カップに満たされたコーヒーがブラックホールのように見えること、そしてコーヒーの魅力で人を惹きつけたいという思いからつけられました。

「普段何気なく飲んでいるコーヒーが良い香りだなとか、今日は深い味わいが出ているなとか、毎日に少し変化があると嬉しいじゃないですか。そのちょっとした幸せというか、日常生活をすこし上質にするお手伝いがしたくて」と思いを語る代表の前田国敏さん(41歳)。

上質なコーヒーで、上質な日常を。その思いを届けるために、世界中のスペシャルティコーヒーの中から質の良い豆を選び抜いて提供しています。どれも100gあたり800円~1000円前後と、高品質でありながら手が届きやすい価格帯です。

脱サラしてこだわりを売る

前田さんは元大手出版・情報サービスの営業マン。幅広い経験を重ねる中で、自分のこだわりが直接活かされる仕事がしたいと感じるようになり、それならば幼い頃から好きだったコーヒーに関わる仕事がしたいと退社を決意。

スペシャルティコーヒーの第一人者として知られる田口護氏がオーナーを務める名店『カフェ・バッハ』で焙煎士としての指導を受けた後、40歳になったタイミングでBlackhole Coffee Roasterをオープンさせました。

ゆくゆくはカフェ経営も見据えているという前田さんですが、まず焙煎士として事業をスタートさせたのには理由があります。

「自分のこだわりのコーヒーを提供するためには、しっかりとした良い豆を使って、確かな技術で焙煎することが重要だと考えています。良い豆が必要だからといって、農園から始めるのは難しいですが、焙煎ならば自分の腕をみがくことで、しっかりと自分の味を確立できると思いました」

そう話す通り、前田さんの仕事には豆選びから焙煎まで徹底的なこだわりがあります。

味の決め手は誠実さ

スペシャルティコーヒーとは、地域の特性が感じられる素晴らしい風味を持ったコーヒーのこと。

Blackhole Coffee Roasterでは、スペシャルティコーヒー関連団体が定める評価基準と評価方法で高評価を得ている世界各地の豆を、前田さんがカッピング(味見)し、これだと思うものだけを取り扱っています。

その中でも、大事にしているのがトレサビリティ(追跡可能性)。育った環境や生産者の想い、ストーリーまで追いかけられるような豆を厳選しています。

「良いものを仕入れ、きちんと仕込み、誠実さを持って仕事に取り組むことを大切にしています」と前田さんが話す通り、焙煎の手順も手が込んでいます。

まず、焙煎を始める前に不良豆をハンドピック(選別)。わずかな傷、色の違いが、雑味や煎りムラとなる原因になるため、一粒ずつ手作業で行われます。

そうやって選ばれた生豆は、カフェ・バッハと大和鉄工が開発した『Meister-5』で丁寧に焙煎されます。この焙煎機は、半熱風式と呼ばれる焙煎機で熱効率が高く、一年を通して焙煎のブレが少ないのが特徴です。

コーヒーの味づくりで重要なポイントは“煎り止めのタイミング”です。煎り止めの直前には、頻繁に豆の色やツヤをチェックし、ここぞというタイミングで釜から豆を取り出します。焙煎士のウデが試される瞬間です。

前田さんは、何度も何度も焙煎とカッピングを繰り返し、それぞれの豆の味わいを最大限に引き出す焙煎度を定めています。その上で、天候や湿度による影響を考慮し、積み上げてきた経験から煎り止めのタイミングを毎日微調整しています。

そして最後に、煎り上がった豆を再度ハンドピックし、煎りムラがあるものや、焙煎の途中で欠けてしまったものを丁寧に取り除いていきます。こうした地道な手間をかけて、ようやくお客さまに届ける上質なコーヒー豆が出来上がります。

だれもが見つかるお気に入りの一杯

コーヒーは嗜好品。人によって好みが異なります。Blackhole Coffee Roasterでは、「お気に入りをひとつでも見つけてもらえるようにしたい」という思いから、産地はもちろんのこと、焙煎度合いも浅煎りから深煎りまで幅広いバリエーションを揃えています。

たとえば、コスタリカ産の『ラ・カンテリ―ジャFW』は中煎り。やわらかな甘さとなめらかな味わいのこの豆は、コーヒーの魅力がすべて詰まった、これぞスペシャルティコーヒーと言える逸品。酸味と苦味もバランスも良く、どなたにでもおすすめすることができます。

ケニア産の『クオコア・テンボ AA』なら中深煎り。柑橘系の酸味をもつこのコーヒーは、最近では浅煎りで飲まれることが多いのですが、あえて中深煎りにし、力強さと優しさを感じられる、サバンナの野生象をイメージした焙煎にしています。ガツンとした強い苦みがあり、それでいて後味はすっきり。気合を入れたいときに飲むのにぴったりです。

また、妊娠や病気など健康上の理由でカフェインを摂取できない方には、カフェインが99.9%除去された“ディカフェ”のスペシャルティコーヒーを。

メキシコ産の豆を中煎りした『オーガニック・ディカフェコーヒー』は、ダークチョコのような甘味があり、ミルクを入れるとびっくりするほど美味しいコーヒー牛乳になります。カフェインレスなので睡眠の邪魔にもならず、夜のリラックスタイムにも安心です。

一般的にディカフェはえぐみや独特の嫌な風味が強く、通常のコーヒーと比べて味が劣ると言われています。

前田さんも当初は、スペシャルティコーヒー専門を名乗る以上は味の劣るコーヒーは出せないと思い、ディカフェの提供は諦めていたとのこと。しかし、コーヒー好きの奥様が妊娠時に苦労していた事を思い出し、一念発起。試行錯誤の結果、えぐ味や嫌な風味を残さない、独自の焙煎方法にたどり着きました。

深くて楽しいコーヒーの世界

Blackhole Coffee Roasterではコーヒーの淹れ方も大切にしており、前田さんが選ぶおすすめのドリッパーやフィルターを販売しています。

その中でも、器具なしでカップに直接コーヒーが淹れられる、使い捨ての『円すい型ドリップフィルター』は隠れたヒット商品。本格的な抽出器具を使いにくい場所、たとえばオフィスやアウトドアなどでも、本格的なコーヒーが抽出できると評判です。

またお店のホームページには、スペシャルティコーヒーのイロハや豆知識が丁寧に記されており、奥深い世界をのぞくことができます。さらに、工房で開催している『コーヒーの淹れ方講座』(1500円・お好きな豆100gのお土産付き)に参加すれば、失敗しないハンドドリップのコツを前田さんから直接教わることもできます。

様々な知識と経験を積み上げてきた前田さん。「世界にはまだまだ知られていない良い豆がある。良質な豆と焙煎の組み合わせは無限大」と、今後はさらに多くの生産地からスペシャルティコーヒーを取り寄せていく予定だといいます。

これほどまでに誠実に作られているコーヒーとはどんな味わいなのでしょうか。あなた自身の舌と鼻で“お気に入りの一杯”を見つけて、毎日のコーヒータイムを上質なひとときにしませんか?

Blackhole Coffee Roaster(ブラックホールコーヒーロースター)
東京都荒川区町屋4-31-11 map
03-6807-9767
火曜・水曜・金曜 12:00~19:00 / 土曜・日曜 14:00~19:00
月曜・木曜定休
https://www.blackholecoffee.jp/
https://www.facebook.com/blackholecoffee/
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