東京都北区赤羽に泊まる。築45年の元美容院ビルを再生したマイクロブティックホテル

東京都北区赤羽に泊まる。築45年の元美容院ビルを再生したマイクロブティックホテル

下町で異彩を放つ1棟のビル

東京都北区赤羽。戦後復興をスタートに発展を遂げたこの街は、1000円でべろべろに酔える庶民的な「せんべろ居酒屋」が軒を連ねる。週末昼夜問わず、中高年はおろか女性や若者までがノスタルジックな雰囲気に非日常を見出し、酒を酌み交わしている。
そんなにぎやかな赤羽駅前から、赤羽中央街商店街の方面へと進むと雰囲気は一変し、個人商店と住宅がひっそりとたたずむ通りへと出る。

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その中で、大きなシャンデリアが一際目をひくビルが「HOTEL ICHINICHI(イチニチ)」である。
オーナーの吉柴宏美さんの祖父母がかつて経営していた元美容院。その築45年を超える5階建てビルをリノベーションし、ブティックホテル/ホステルとして昨年11月に開業した。

「先代がつくったものを使わないまま放っておくのではなく、形を変えて何か違うものにできないかなと考えたのがスタートです。そして、日本人だけでなく外国の方にも、赤羽を通じてリアルな日本を感じてもらいたいと思いホテル/ホステルの開業に至りました」(吉柴さん)

赤羽は在来線も多く、池袋・新宿・東京は15分、銀座・浅草・秋葉原など定番観光スポットの多くが30分圏内。羽田空港については直通バスの乗り入れがあるなど、実は東京観光においてとても立地が良い穴場なのだ。

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新旧が入り混じる絶妙なバランス

ブランドコンセプトには日本の文化である「茶」を取り入れ、赤羽の雑多な荒々しさと温もりが同居するスタイリッシュな内装を完成させた。デザイナーとして培ってきた知見を活かし、ブランディングからサインデザイン等まで吉柴さん自ら行っているという。また、設計はJCDアワード(一般社団法人 日本商環境デザイン協会主催)の受賞歴もある建築家・会田友朗氏が手がけた。

客室タイプは、1名用ドミトリータイプ・2名用個室・スイートルームの3タイプ。
ドミトリーといっても、二段ベッドがぎゅうぎゅうに置かれた相部屋ではない。ゆったりとくつろげる個室仕様で、茶室をイメージしたデザインは、旅慣れたバックパッカーにも新鮮な驚きを与えている。

「全部を作り込むのではなく、古いものと新しいもののバランスをすごく考えました。建物の生きてきた歴史を見せつつ現代に昇華させたかったので、あえて躯体や壁の一部を残したり、インテリアは祖父母が当時使っていた物を極力使い、それを活かすために他はあえてシンプルな物を選びました」

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同ホテルに1室しかない最上階のスイートルームは、大きなテラスやガラス張りのバスルームが付いた特別な部屋。ワンフロアを贅沢に使っているので、恋人や友人と気兼ねなくプライベートな時間を満喫することができる。

他にも、女性専用フロアの設置や英語・中国語を話せるスタッフによる滞在サポート、またビジネスマンや外国人旅行者からの特にニーズが高いWi-Fiも無料で利用することができる。シーンに合わせた使い方ができるのも魅力のひとつだろう。

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目指すのは偶然の出会いが生まれる場所

また、ぜひ利用してほしいのが1階のカフェ&バー「THE 315」だ。お茶をテーマにしたオリジナルメニューやビンテージの調度品など、独自の世界観を感じさせる。よく見ると、テーブル席上の照明は、美容院時代に使われていた「お釜ドライヤー」のアーム部分にシャンデリアが取り付けられており、こちらも客室と同様に当時の名残を随所に見ることができる。

看板メニューは「北区盆とお茶セット(1200円)」。厳選した地元北区の銘菓とオリジナルスイーツを少しずつ味わえるプレートに、赤羽の日本茶専門店・思月園が監修した日本茶ハーブティーをセットで楽しめる。その他にも地域の地産品を使ったメニューを揃え、食を通じて街を体験させてくれる。

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こちらのカフェ&バーは宿泊者以外のビジターも利用することができ、むしろ歓迎している。旅行者やビジネスマンや若者、そして地元の人々といった、普段は交じり合うことがない人々をミックスさせるのが狙いだ。
映画のワンシーンのような偶然の出会いやハプニングが生まれる場所。「THE 315」は、HOTEL ICHINICHIの想いを象徴する空間であるといえよう。

「昔のように、もう一度ここがコミュニケーションの場になってくれたらと思っています。この周辺も昔とは変わって、シャッターが閉まったままのお店も多くて…。人の集まる場所ができるとその周りも自然と活性化していくと思うので、ここをきっかけに地域一帯を盛り上げていきたいですね」

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さらに今後は、宿泊客や地域と一緒にイベントを企画していきたいとのこと。

デザイナーから一念発起。子育てをしながら新たな世界で起業に挑み、幼少期の思い出が詰まったこの地に新たな命を吹き込んだ吉柴さん。
人と人のつながりを大切にするアイデンティティーは失われることなく、世代を超えて受け継がれている。

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HOTEL ICHINICHI(ホテル イチニチ)
東京都北区赤羽1-32-4
03-3901-6661
チェックイン  17:00~
チェックアウト  ~10:00
http://ichinichi.tokyo/index.jp.html

THE 315(ザ サンイチゴ)
バータイム  19:00~24:00
カフェタイム 14:00~19:00(金曜・土曜のみ営業)
月曜・水曜定休