実はとってもアートな職業!左官職人が作るハイセンスな○○!

実はとってもアートな職業!左官職人が作るハイセンスな○○!

「左官」という職業を知っていますか?

左官とは、建物の”壁塗り”をする職人のこと。職業としての歴史は古く、城や寺院、茶室、蔵などの日本建築をはじめ、数々の建物を仕上げてきました。例えば、白く美しい見た目から「白鷺城」と親しまれる姫路城は、代表的な左官壁のひとつ、漆喰(しっくい)が施されていることでよく知られています。

時代を超えて技術を受け継ぎ、「左官職人がいなければ建物は建たない」と言われるほどの存在となった左官ですが、近年は、早くて簡単に仕上がる壁紙などの工業製品に押され、その需要は減少傾向にあります。しかしここ数年、一般住宅から店舗内装まで、あえて左官壁を選ぶ人が増えているといいます。その理由を有限会社原田左官工業所の代表取締役社長・原田宗亮さんにうかがいました。

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呼吸する壁?!からだにやさしいオーガニック空間

まず、人気上昇の理由のひとつに、室内環境を整える力が挙げられます。「左官壁は、石灰岩や化石、貝殻などの自然素材を原料にしたものを、塗り固めて作ります。これらの素材には元々、湿度を調節したり、カビの防止、有害物質を吸着して分解するなど、快適な空間を保つ働きがあるんです。壁が呼吸しているというイメージですね(原田さん)」

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日本伝統のクリエイティブ集団

そしてもうひとつの大きな理由が、芸術性の再評価です。左官は”コテ”と呼ばれる道具を使って壁を塗り上げます。鍛え上げられた技術力で、平たくなめらかに仕上げることも、模様をつけることも自由自在。画家が筆を持つように、左官はコテをあやつるのです。

「左官はすべて手仕事。だからなんでも出来るんです。お客さまのイメージを、どんな材料どんな技法で実現するかが職人の腕の見せ所ですね。色々な素材を混ぜ合わせてオリジナリティを出すこともできます。例えば、あるお店では、コーヒー殻を混ぜ込んだ内装に挑戦しました。見た目だけでなく、コーヒーの香りがほのかにして、お店のコンセプトともマッチしていました(原田さん)」

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技術を次世代へつなぐ

世間から注目される一方、左官業界では職人の減少と高齢化が深刻な問題となっています。最盛期には30万人いた職人が、現在は5万人程度まで減少。
「需要が高まっても担い手がいなくなれば、施工数は減ってしまいます。なにもしなければ、左官自体がなくなってしまうかもしれません。それゆえに、PR活動と若手職人の育成にもっと力を入れていかなければいけないと思っています」と原田さんは警鐘を鳴らします。

原田左官工業所では、塗り壁体験会や、自宅の壁を自分たちで塗りたいという要望に応えるDIYサポートにも取り組んでいます。多くの人が左官に触れられる機会として参加者から好評を得ているほか、体験会をきっかけに職人へ転職し活躍している女性もいるとうかがいました。

育成の面では、先輩職人の技を「盗み見て覚える」ことを推奨するのではなく、繰り返し自主練習ができるよう、手本をインターネットで動画配信するなど若手育成の環境整備に力を注いでいます。そういった積み重ねにより、業界全体では職人の60%を60代以上が占める中、同社の職人平均年齢は37歳と突出して若手が多く、日々活気にあふれています。

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左官をもっと身近なものに

また、昨年の7月には、版築(はんちく)という左官技術を応用した卓上かまどを、職人からのアイディアで開発しクラウドファンディングに挑戦。「手に取って使って、左官の良さを感じてもらえるものができないか」と始めたプロジェクトは多くの関心を集め、120万円を超える支援金が集まりました。

「まずは知ってもらうことが大切だと思っています。新しいことに挑戦することで、今まで左官と縁遠かった人たちが興味を持ってくれるかもしれない。みなさんからの注目が、働く職人たちの励みにもなっています。『左官』というキーワードと仕事をたくさん残していきたいですね」と語る原田さんのやわらかい表情に、時折見せる強いまなざしが印象的でした。

私たちの何気ない暮らしの中にも、さまざまな伝統技術が息づいています。ぜひ一度、家やオフィスやレストランなど身近な建物にある職人の技を探してみてはいかがでしょうか。新しい空間の楽しみ方が見つかるかもしれません。

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有限会社原田左官工業所
東京都文京区千駄木4-21-1 ハラダビル
03-3821-4969
http://www.haradasakan.co.jp/